上巻52頁

23.「C棟なる建物」
CERNの建物には、すべて番号が振られており、アルファベットで呼ばれる建物は存在しません。ビルディング1番の隣は52番、その隣に3番があり、更にその次は58番と、きわめてわかりにくい。そこでCERNのホームページには、建物番号を入力すると地図を表示する欄があります。
ちなみに、通りの名前にはRoute H. Yukawa、Route A. Einsteinなど、物理学者の名前がついています(物故者に限る)。

上巻83頁

24.「神学的物理学?」
素粒子物理の最近の発見が精神性に深く関わる、と思うかどうかは、個人の信念に属する問題で、そのような考え方が物理学者の共通認識になっていると考えてはなりません。「利己的な遺伝子」で有名なリチャード・ドーキンスの近著「The God Delusion(神は妄想である―宗教との決別)」などのように、 自然科学を研究すれば、必然的に無神論的になると考える人がいる一方、「天使と悪魔」のレオナルドと同様、著名な物理学者であり、かつカトリックの司祭であるという方も、現実におられます。

上巻84頁

25.「神、奇跡、および新物理学」
この本のタイトルは、アリゾナ大学の物理学者ポール・デービスが書いた「God and the New Physics(神と新しい物理学)」に良く似ていますね。

上巻87頁

26.「膨大な電力を消費する」
本当に1/4グラムもの反物質を作ろうとしたら、膨大な電力が必要になります。仮に電力を効率100%で物質と反物質の対に変換できるとしたら - これは実は不可能で,本当はもっともっともっと効率は悪いのですが - 1/4グラムの反物質を作るのに必要な電力量は、約13ギガワット・アワー(GWh)です。CERNのホームページによれば、CERNの年間の消費電力量は1000 GWhですから、所長が電力消費の異常に気づいたというのは、よく考えられた伏線です。

5月24日追記:CERNの電力消費のうち、反陽子生成に関係する部分は約1/75の450 kW程度です。一方、3000万個の反陽子が約100秒ごとに生成されるとした場合、生み出された反陽子の質量に対応するエネルギー(3x107 x mc2/100)は、わずか0.00005Wでしかありません。その比は10-10 。すなわち、消費電力の100億分の1しか反陽子に転化できていないのです。これは極めて効率が悪い。この効率の悪さの原因は、陽子を原子核標的にぶつけた場合に反陽子が生じる割合は微小であることにあり(物理法則がそのようになっている)、将来の技術革新によって改善する余地はほとんどありません。

Yukawa通り

CERN構内のH. Yukawa通り(photo hayano)

コーラーの案内でラングドンは「C棟」の最上階にある、CERNの科学者(かつカトリック司祭)のレオナルド・ヴェトラのオフィスに導かれ、そこで胸にイルミナティの焼き印を押されたヴェトラの死体と対面します。


上巻91頁

27.「ああ。生物物理学者だ。」
生物物理学という分野があるのは本当ですが、CERNにはこの分野の研究者はいません。 なお、下巻の最後のヴィットリアの言葉「わたし今度の研究は科学の歴史に名を刻みますわよ。ニュートリノに質量があることを証明するつもりなんですから」は、なかなか意欲的ですが、1998年に出されたスーパーカミオカンデの論文、”Evidence for Oscillation of Atmospheric Neutrinos”(大気ニュートリノ振動の証拠)により、ニュートリノに質量があることが決定的となりました。ノーベル賞は確実と思われる、この研究を率いた戸塚洋二先生が、昨年ガンでお亡くなりになったことは、非常に残念です。

レオナルドの娘、ヴィットリア・ヴェトラが、生物学の調査をしていたバレアレス諸島からヘリコプターで研究所に戻ってきました。彼女は生物物理学者です。